天之美禄の小さなお話 | ARIRIA

外の世界は
一日の始まりを告げているというのに

私はというと
重苦しいカーテンに包まれた部屋で
布団から抜け出せずにいた。

ぼんやりとした視線で
カーテンの端を見つめていると
不透明なそれは
そろりと忍び寄り
部屋の隅に佇む小瓶に
すっと入り込んだ。

床に
小さな太陽がひろがった。

予想外の小さな太陽の現れに
何かが変わる気がして
まだ温かみの残る布団から
抜け出してみた。

小さな太陽が入り込んだ
瓶を手に握りしめ
蓋をそっと開ける。

ゆっくりと手のひらにひろがる
小さな太陽の液体は
優しいあたたかな香りと共に
私を外へ連れ出そうと
誘っているかの様で

そのやわらかな誘いに
思わずのってみようと
久しぶりに鏡へ向かった。

＜天之美禄＞

かつての心を思い出し、つづった短いお話です。

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