万頃瑠璃の小さなお話 | ARIRIA

帰宅して数時間も経つというのに
自分の中のささくれ立った心は
鎮まらず

どうやら私は
トゲトゲした思考に乗っ取られた
トゲトゲ女のようだ。

頭ではわかっているのだが
口から出るのは
どうしても毒を含んだ言葉ばかり。

優しくありたいし
寛大でありたいと願いながらも
なぜか今はその思いが
うまく表現できない。

心の奥底で
「晴れやかでいたいのに」
そんな思いが渦巻くものの

なかなかうまくいかず
空回るばかりで
今日は疲れてしまった。

風呂上りに、ふと
青々としたボトルと
目が合った。

すでに眠る時間を
とうにこえた深夜

いつの日だったのかさえ
すでに忘れてしまった
夏の青さを思いだしながら

ぽたり
ぽたり

雫が光を帯び
手のひらの窪みに
ゆらゆらと揺らめく。

手のひらと顔を重ね
目を閉じ
深い息を吐き出すと

瞼の裏側に
万頃瑠璃の情景が
広がった。

＜万頃瑠璃＞

かつての心を思い出し、つづった短いお話です。